<2019年1月14日、第一幕・第二幕ともYoutubeの視聴リンク追加しました。情報をお寄せくださいましたあくとべ様、ありがとうございます!>
第一幕
第二幕
おはようございます。KISEです。昨日紹介したアバイ記念オペラ・バレエ劇場に関連して、カザフスタンのオリジナル・オペラ作品のあらすじを知りたいと思ったのですが、日本語の情報は皆無。しかしながら劇場ウェブサイトのレペトワページに英語・ロシア語・カザフ語のあらすじがあったので抄訳してみることにしました。(たぶん)本邦初です。
第一回目はその名も『アバイ』。詩人アバイについては、駅、大通り、オペラ劇場、すべてに名前がつけられたカザフ・ナショナリズムの父アバイにて紹介しています。
まずは、 少々古いですが、2014年に公開されたトレイラーがこちら。
オペラ『アバイ』あらすじ
(以下、GATOB公式ウェブサイトより翻訳して引用)
第1幕
夜、アジャルは息も絶え絶えに走っていた。彼女と彼女の最愛の男アイダルは追われている。アイダルが悲しそうに言う。彼の馬が死んだと。馬が死ねば逃れるすべはもうないだろう。
アジャルの許婚ナルムベトの親族は激怒している。しかし恩師アバイの村はもう近い。アジャルは自分を置いていくようアイダルに 請うたが、彼はそれを拒否した。「不名誉な人生をおくるくらいなら死を選ぶ」と。
迫る追手が「捕らえて縛り上げろ」と叫んでいる。二人を馬に縛り付け、草原を引き回させて殺そうというのだ。
捕らえられ、必死に恩師の名を呼び続けるアイダル。そこに弟子のコクバイ、そしてアズィムを従えたアバイ師があわられる。アバイ師は、追手に二人を見逃してやるよう説得し、コクバイに縄を切るよう指示する。古の草原の法に従うことを是とするナルムベトの親族の長ジレンシェは、渋々ながらアイダルとアジャルを開放するが、アバイ師への嫌悪は募る。
アバイ師の弟子であり、アイダルの友人でもあるアズィムは一人、友の罪について考えていた。そこに族長ジレンシェがあらわれ、アジャルを村に連れ戻すよう頼み込む。きっとそれが平和な解決だ。アズィムもそう思った。ジレンシェはこうも言う。「アバイに無慈悲な怒りが落ちようともお前が罰せられることはない」。そう言い残してジレンシェは去っていった。
アバイ師がアイダルに詩を教えたと聞き、 アズィムは、詩など アイダルを心よく思っていない人々の逆鱗に触れるだけだと彼の詩作を批判した。しかしアバイ師は「沈黙で詩は生れない。闘志が心を刺激するのだ」という。
アジャルのもとを老スルタンが訪れる。彼女は裁判での発言を許されていないから、スルタンが代わりに彼女の言葉を聴きにきたのだ。アジャルの口から語られる暮らしへの絶望とアイダルへの思いに老スルタンは感心し、審問で彼女の言葉を伝えてやると約束する。
場面は法廷。皆がアジャルとアイダルの運命を見守っている。族長ジレンシェは、先祖代々の慣習を守るべきだと主張する。それが草原で和平を保つ作法だからだ。一方、人間の心と愛の力を力説しアイダルの放免を請うたのはアズィムだった。若い愛が部族の確執を生んではならないと彼は言った。
ジレンシェは、いつかアイダルが古の法を破綻させぬうちに彼の命を奪うことを腹に決め、かつて法を犯した二人を死刑にしたという老ケンギルバイの故事を持ち出した。さらに、アバイ師も罪人を擁護したとして非難する。しかしアバイ師によれば、老ケンギルバイはその後、皆に恐れられ嫌厭されたという。アバイ師はこうも主張した。血を流してしまえば、今日この日は永遠に悲しみと恥辱の記憶として残ることになるだろうと。
老スルタンは、若い二人の罪を認めながらも命を奪うことはしなかった。二人は放免された。人々はこの判決に納得し、アジャルとアイダルを祝福しながら去っていく。
残ったのは族長ジレンシェとナルムベト、そしてメス。彼らはアバイ師に打ち負かされたことを恨み、師の排除を決意する。
第2幕
挙式の準備が進んでいる。アイダルが詩を吟じている。アズィムは、騒動をぶり返さないためにも詩をやめるよう忠告するが、アイダルは彼の言葉を聞かずに去ってしまった。アイダルの選択は間違っている。アバイ師がそうさせているのだとアズィムは思う。やはり古の掟を破る者は殺さねばならぬ。やりとりを盗み聴いていたジレンシェがアズィムに手渡したのは毒の瓶だった。
挙式がはじまる。祝賀のダンス、花嫁のベール、謝辞。アズィムは機会をうかがってアイダルの杯に毒を盛った。アイダルの叙情的な詩とともに踊りは続く。
アイダルは歌う。「黒眉の美しい人よ、私の思いを贈りたい」と。
そして次の瞬間、彼は倒れ込んだ。
死の床にあるアイダルはアジャルに別れを告げ、そしてアバイ師に問うた。「呪いで人を殺せるでしょうか?」と。師の答えは否だった。それを聞くと、アイダルは自分の胸を寛げ、再び尋ねた。「ではこれはいかなる病でしょうか?」。
黒ずんだ彼の体を見て誰もが息を飲んだ。アイダルは自答した。「私は毒を盛られたのです」と。アバイ師の弟子コクバイの知らせでそれを知った人々は激怒し、犯人を探し始めた。疑いをかけられたジレンシェはしかし、老スルタンに自身の潔癖を誓い、あろうことかアズィムにも無実を誓うよう言う。
アズィムはそれ拒否して罰された。最愛の人を失ったアジャルは悲嘆にくれている。それでもアバイ師は、彼の弟子と人々を信じ、彼らが前に進むため導き続けることを誓い、終幕。
考察
ここからは私見です。オチがどうにも中途半端ですっきりしないので私なりに補足を試みると、タイトルにもなったアバイ・クナンバエフは、こちらでも書いたとおり、カザフの地にはびこっていた蛮習(と言えるかはもちろん時代によりけりですが)を正し、カザフ民族の地位向上に尽くした人物です。つまり、アジャルとアイダルの駆け落ちを極刑に処すような古い掟を打破し、それよりも人間の感情や愛を優先する新しい時代にしていこう。アジャルとアイダルは悲しい結末に終わったけれど、これからも啓蒙の道を諦めないぞという、前向きなラストだと考えれば、納得できなくもないです。
誤訳もあるかもしれませんので、実際にご覧になった方、オペラに詳しい方のご意見もお待ちしております。
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